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倉橋島のお宝 since 2008-10-10

いつきしま姫物語

むかしむかし、いつきしま姫のみこと、というそれはそれは美しいお姫さまがおいでになりました。お姫さまは自分の一生の住み家をどこにしようかと、瀬戸内のあの町この村と、景色のよい住み心地のよさそうなところを、さがし求めて歩いておいでになりました。二つになる子どもを抱いて、布を織るはたを船に積み、家来の者をしたがえて、どこからともなく、今の長門島の沖にたどりついてこられました。 日はまだ高い秋の午後でした。お姫さまのご一行は、今の蓬莱山に船をつけて一休みすることになりました。 雲一つない澄みきった秋の空をうつして、海は鏡のように明るく静かな眺めでした。その中に南の沖の島々の浮かんだ絵に描いたような小島の景色は大変お姫さまのお気に召されました様子でありました。 しばらく南の沖の小島の景色に見とれていたお姫様は大変喜んでここは大変いいところだ。ここへお宮を建てて住むことにしようと言われました。 そして船に積んだはたを島におろし、子供を抱いて、丘の様子を見に上がることにしました。 あちらこちらをみてまわっているうちに、いつのまにか観音山というところに出てこられました。 そこでお姫さまは景色は大変よいところであるが、水はきれいであろうか。といって家来の者に水の出そうなところを掘って見るよういいつけられました。 家来の者どもは一生けんめいに谷間を掘ってみました。ところがどうでしょう。出てくる水はきれいな谷間の清水ではなく、どろどろした金さび色の水ではありませんか、また白い布をつけると紅いろに染まりました。お姫さまは大そうがっかりしてしまいました。 つるべ落としの秋の日は大分西にかたむいてしまいました。途方にくれたお姫様はああここもだめだつたまたどこかさがさなければならないかと、ひとりごとをいいながら、さびしくため息をつくのでありました。すると谷間の森の中から、テテッポッポーという寂しそうな山鳩の泣き声が、旅のさみしさを一そうかき立てるかのようにしずかにきこえてくるのでありました。お姫様は大変さびしくなって、家来の者をつれて、つかれた足をひきずりながら、また蓬莱山までかえつてこられたのであります。そして日の暮れかかった蓬莱山の岩の上にお立になり、観音山の森の方や沖の小島の方をごらんになつて、ああ、岡を見ればいやらしや沖をみれば情けなやと云う言葉をのこして、また船に乗ってあてもない旅路につかれたのであります。

追記

桂浜神社にいつきしま姫の来島記念の貝が奉納されています。